過密化の進むEV防火市場

過密化の進むEV防火市場
電気自動車(EV)用バッテリーの熱暴走や火災を防ぐことは重要テーマの1つです。自動車業界にとって、安全性は最優先事項であり、脱出時間確保などの安全性向上策が導入されるなど、規制も追いつき始めています。バッテリーパックの設計やメーカーの要求事項が多岐にわたり、熱暴走の伝播を防止・遅延させるさまざまな種類の材料が採用されるようになっています。EV市場が急成長する中で、材料サプライヤーに大きな機会が待ち受けているのは確かです。IDTechExでは、EVバッテリー用防火材料の2023年から2034年にかけての年平均成長率は16.3%になると予測しています。
 
IDTechExは、ここ数年にわたり、非常に多くの材料サプライヤーがこの分野に参入してくるのを目にしてきました。既存材料の転用を行うサプライヤーもあれば、専用のソリューションを開発するサプライヤーもあります。現段階では、大手材料サプライヤーのほぼ全社が、防火材料の選択肢を少なくとも1つ持っています。
 
業界イベントから得た知見
 
2024年1月、IDTechExは日本の東京で行われたオートモーティブワールド2024に出席しました。本イベントで出展されていた、ダウやH.B.フーラーの発泡封止材は主に円筒形セルシステムに使用されてきましたが、角形・パウチ型セルのセル間に使用されるチャンスもあります。
 
また、IDTechExはデンカと富士高分子工業が、それぞれ吸熱添加剤入りガラス繊維材料とシリコーンゴムを出展していることを確認しました。STANLEY Engineered Fasteningもこの分野に参入しようとしており、同社のEVバッテリーパック向け熱管理ソリューションの一部として、放熱フィン、膨張補正装置、断熱層を展示していました。
用途はセル間だけに限りません。フジクラが紹介していたグラファイト系膨張性材料は、高温時に膨張し、バッテリーパックのシール周りに保護層を形成するというものでした。
 
インターバッテリー2024では、Shinsung C&T、Wacker、3M、アルケジェン、アスペン・エアロゲルなどの各社がEV用バッテリーの防火材料を展示していました。密度と熱伝導率が低いことから、エアロゲルの関心が高まっていることは確かです。ほこりっぽい性質や高コストを中心としたこれまでの課題はあるものの、エアロゲルはアスペンやアルケジェンなどで採用が増加しています。IDTechExの調査レポート『エアロゲル 2024-2034年: 技術、市場、有力企業』では、エアロゲル市場が2034年までに26億ドルを超える規模になると予測しています。これは、現在の数億ドル規模からの大幅な増加であり、その主な推進要因はEV用バッテリー分野です。
 
注意すべき点は、こうした材料は、開発計画から量産中の材料まで、商用化の段階が多様であること、本記事に記載しているのは市場参入者のごく一部であるということです。実際、現時点でIDTechExの材料データベースには、EV用バッテリーの防火向け材料が130種類以上掲載されています。
 
 
IDTechExでは、130種類を超える防火材料の各種特性をベンチマーク評価しています。 出典: IDTechEx
 
材料サプライヤーにとっての課題
 
材料サプライヤーが直面する課題の1つがサプライチェーンです。例えば、完成車メーカーの中には、組み立て済みのバッテリーモジュールを中国や韓国から調達しているところもあります。つまり、その完成車メーカーにはセル間に使用する材料への影響力がほとんどなく、サプライヤーはバッテリーメーカーと直にやり取りすることになる可能性があるということです。とはいえ、この状況は自社OEM生産の拡大とともに変わりつつあります。また、完成車メーカーの多くは他のコンポーネントの材料サプライヤーとの既存の強固な関係があるため(自動車業界が要求する数量対応できない場合はなおさら)、新規参入はより困難です。
 
材料は、熱伝導率、密度、厚さ/体積、絶縁耐力、最高保護温度、そして最終的にはコストといった特性のバランスを取らなければなりません。どの材料にも一長一短があるため、サプライヤーは自社のラインナップにバッテリーの各種用途(例:円筒形、角形、パウチ型セルのセル間の保護、モジュールレベルでの保護、パック蓋・母線・シール・通気穴の保護など)への適性をある程度見いだせるかもしれません。
 
EV用防火材料のビジネスチャンス
 
課題はあるものの、急成長を遂げるEV市場が防火性をより重視するようになったことで、この分野において多くのプレーヤーに事業の好機が生まれています。乗用車だけでなく、マイクロモビリティ、トラック、バスなどのセクターでも電動化が拡大しており、自動車市場以外に機会をもたらしています。2034年には、自動車以外のセグメントが、オンロードEVセグメント向け防火材料から生まれる収益のうち19%を占めるようになるとIDTechExは予測しており、これは現在の約9倍の増加です。
 
IDTechExの調査レポート『電気自動車バッテリー用防火材料 2024-2034年:市場、トレンド、予測』では、セラミックシート、マイカシート、発泡封止材、エアロゲル、コーティング(耐火塗料や発泡性防火塗料)、相変化材料など、各種カテゴリーの材料の市場シェアと成長を予測しています。本レポートでは、今後の規制や、セル形式、セル・ツー・パックなどのバッテリー設計の転換について考察することで、乗用車、バン、トラック、バス、二輪車、三輪車、マイクロカーなど、あらゆる路上走行車カテゴリーにわたって数量と価値の予測を算出しています。
 
さらに詳しくは、各調査レポートのサンプルページ(ダウンロード可能)と目次のページでご確認ください。
 
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